モノレールで海を見る②

前回の続きです。

 

浜松町を出発して15分。モノレールは目的地の一つ、「整備場駅」に到着した。

 

 

モノレールの華奢な線路に、貼り付くようにして作られた鉄骨造の殺風景な駅ホーム。普通の鉄道の駅よりもだいぶ小ぢんまりとした印象だ。床のタイルもより無機質な感じを演出している。

そうそう、この感じ…と心の中で独り言ちて、ひとまず改札へ。

 

 

まるでどこぞのローカル線のような駅舎だが、羽田空港と都心を結ぶ大動脈の駅である。木造駅舎とは違う、やはりこの時代らしい無機質なコンクリ造の駅舎は独特の味がある。

とはいえ、空港快速は見向きもせずに、ヒュンヒュン、と、鉄道とは違うモノレール独特の音を奏でながら去っていってしまうのだが…。

駅の周りには、その名の通り飛行機の整備会社であるとか、自衛隊の施設であるとか、そういった施設が並んでおり、これまた殺風景なことこの上ない。もとより見るものがないことは分かっていたし、その雰囲気を望んでいたので満足である。

 

(しかし後から分かったことだが、かつてGHQに接収されるまで存在した「鈴木新田」という町の跡を示す記念碑があったようだ。これは見学すべきだった。)

 

続いて、第二の目的地昭和島駅へ。

こちらも整備場駅に負けず劣らず、いやそれ以上に殺風景な駅かもしれない。整備場駅はあくまで羽田空港の一端を担う場所に位置しているが、昭和島駅は完全に独立した文字通りの「島」に位置しており、時折秘境駅扱いされているほどである。もともと信号場として開設されたそうで、こんなところに駅が…というのが率直な印象だ。

 

整備場駅を今度は浜松町方面に向けて出発する。今度は海を見渡せるボックス席に座ることができた。ここぞとばかりに、飲み物を開封Apple Musicで好きな曲を再生。一瞬の旅情を目一杯楽しんだ。

 

 

さて、昭和島駅に到着したのだが、降りた瞬間、お世辞にも良い匂いとは言い難い強烈な臭気が鼻を突く。これは一体…と思ったがすぐその正体が分かった。駅の真横が下水処理場なのである。なるほど、これは唯一無二のロケーションで、秘境駅扱いされるのも分からないでもない。

ちなみにこの下水処理場は、「森ヶ崎水再生センター」といい、日本最大級を誇る施設だそうだ。ホームページによれば、品川・目黒・大田・世田谷区の大部分、渋谷・杉並区の一部の下水処理を行っているとの由、都民の大事な施設なのである。

森ヶ崎、はちょうどモノレールの対岸に位置する地名であり、昭和島へ直接アクセスするルートはない。かつては鉱泉からなる行楽地として名を馳せ、多くの文人に愛されたそうだ。スーパー銭湯でも出来れば面白いな、なんて思ったりするのだが…。

 

さて話がそれてしまったが昭和島駅である。

昭和島駅のホームと駅舎はやや離れたところにあり、駅舎まではご覧の通りの細長い通路と地下道で繋がれている。目に入るすべてが直線だけで構成されているせいか実際よりも少々長く見える。近所には鉄鋼団地等もあるので思ったより乗客はいる模様だが、それでもあまり人もいないので、少し前に流行った「Liminal Space」っぽさがある。

 

 

その先で駅舎に繋がる地下道も、ご覧の不気味さ…。駅というより、古い病院や研究所のような雰囲気があり少しドキドキするシチュエーションだ。

 

 

個人的にドキッというかゾクッときたのがこのドア。絶妙な小ささの窓と厳つい鍵、ちょっとホラー映画のような雰囲気。

そういえば昔、バイトの用事である研究所のような場所に出入りしていたことがあるのだが、そこではやはりこのようなドアに、害虫防止の黄色いガラスが嵌っており、真っ暗な廊下にドアから黄色い光が漏れて得も言われぬ独特な雰囲気を醸し出していたのを思い出す。個人的には嫌いではなく、やはりちょっとドキドキ、ゾクッという不気味さで、むしろ好きだったかなと。なので、この昭和島駅の様子も個人的にはなかなかグッと来るものがある。いずれにしても都内の駅とは思えないビジュアルである。

 

さて、通過する空港快速を見送って、昭和島駅を後にする。再びビルや運河の合間を縫って、浜松町へ向けてモノレールは快走してゆく。大海原という訳では無いが、やはり水辺の景色というのは良いものだ。ほんの束の間の「現実逃避」としては、なかなか良い時間だった。

そして、何度も目の前を通過してゆく空港快速…。あれはあれで爽快そうだな、と気になってしまう。次は食わず嫌いせずに空港快速に乗ってみようか?宿題が増えてしまった。