私サボテンも枯らしちゃうの

花を育てる、という行為は心も穏やかになり、見た目にも美しく、さぞ癒やされると思われるが、実際にはきれいに咲かせようと思うとやはりかなり手がかかるもので、気候や害虫の影響があれば簡単に枯れてしまう。本気になればなるほど癒やされるどころかカリカリしてしまうものだが、これはどの趣味でも一緒かもしれない。

何事も程々が肝心である。

 

さて、一応花屋の端くれをしていると、よく「サボテンですら枯らした」というフレーズを聞くのだが…ショックを受けている皆さんのために一言言っておきたい。

サボテンは、難しいですよ!!

 

基本的に植物というのは、移動することができないから、原生地の環境に最適化されている。サボテンの原生地は大概が砂漠だから、容赦なく照りつける太陽と酷暑、遮るもののない風、極端な水不足、そして意外なのが夜の冷えである。

この植物を、お部屋に持ち込んで大事に水やりしているとすると、まず厳しい日照不足、淀んだ空気、冷えない夜、そして過剰な水と最悪なダメージを負うことになってしまう。枯れて当然なのだ。何も恥じることはない。

よく、風水系のショップで「悪い気を吸ったので枯れた」みたいなことを書いてたりするけども…正直、噴飯ものである。

 

逆にこの環境なら、ジャングルの下草のような植物のがまだ向いているわけで、実際観葉植物は、そのような植物を改良していったものが多い。なので気をつけないと冬の寒さで枯れる。そんなもんだ。

 

なので、世のサボテン愛好家たちは絶対にリビングやましてトイレでサボテンを育てたりしない。最低でも外、大体が簡易温室を作って日中はギラギラ太陽で酷暑に置き、夜は冷やす。鉢は根が温まるよう黒一択だ。であるから、先に挙げたような環境に置いた瀕死のサボテンの画像とともに、「枯れそうです!どうしたら?」なんて内容をYahoo!知恵袋にでも投稿しようものなら、人格否定のごとき集中砲火を浴びることになる。

 

ただ、花屋として思うのは、別にみんなサボテンのマニアじゃないし、ほとんどの人はインテリアの延長線上で購入するということである。いくらマニアが買い支えようが、まずは一般層に売れなければ全体として見て成り立たないわけで、これを責めるのは酷というものである。やはり室内でカワイイ鉢に入れて眺めたい、というのが大方の心理であろう。

 

となると、考えるべきはいかに室内で延命するか?という方法である。

愛好家たちのように立派な株を目指すとなるともう無理があるのだが、徳川家康よろしく生かさず殺さず、楽しむにはどうしたらいいのか?

まずは種類選びだが、窓際の光くらいでも耐えられる種類を選びたい。例えばギムノカリキウムなんかは、直射日光だとかえって日焼けしてしまうこともあるくらいだから、しっかり日の当たる窓辺なら好条件だ。価格も比較的安価で挑戦しやすい。とにかく1秒でも長く日に当たり、1ミリでも窓に近い方がいいだろう。種類を言われてもわからん!という向きもあるだろうから、緑の濃く棘が薄めの丸っこいものになるかなと。水やりは真夏と真冬は思い切って断水。春と秋にドバッと水やりがいいだろうが、気にせず常に月一でいい、という意見もある。いずれにせよ水は控えめにして徒長や腐敗を遅らせたいところだ。エアコンの風は避けつつ、時折窓を開けて風に当ててやる。これでだいぶ長持ちすると思うし、うまく育てられると思う。

成長の早いウチワサボテンや花サボテン等は、室内ではすぐ徒長してしまうので難しいかな…。

 

ちなみによくあるガチガチに固まったカラーサンドに植わっているサボテン、あれは遅かれ早かれ枯れてしまうので、花屋的にはオススメできないです。そもそも根が伸びる余地が1ミリもないんでね。

売れるし可愛いけど…なので観賞用と割り切るという形になるだろう。この辺りも愛好家からは、拷問や虐待の如し!!と鬼のようなお叱りを受けるのだが、商品として見ると、売れるのでね…。残念ながら売上には敵わないというのが正直なところである。長く育てたいなら、このカラーサンドを全部崩して根本を乾燥させ、専用土で植え直すことだが、これでは何のために買ったのかわからない気もする。

 

あと、てっぺんが赤く根本が緑の「緋牡丹」。非常に人気のサボテンだが、あれは必ずすぐ枯れます!必ずです。

理由は簡単で、接ぎ木の台木になっている(緑の部分)「三角柱」というサボテンが、ただでさえ寿命が短いのに、上の赤い「緋牡丹」に光合成の成果をチューチュー吸われている格好になっているので、腐ってすぐお亡くなりになるのである。なのでこれは切り花と同じ。割り切って枯れても凹まないことだし、継ぎ直しも難しいから諦めるのが吉である。

 

そう考えると、花屋というのはなんだか罪作りな商売な気がしてくるな…。

ちなみにサボテン、色々やりましたが個人的ベストは「雨の当たるベランダで放置」でした。本末転倒。